目がさぐるようにシルクの

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目がさぐるようにシルクの


 シルクはお辞儀をしてその羊皮紙をつかむと、「さ、おいで」とガリオンに言い、部屋を出た。
「何が起きたの?」風の吹きすさ優悅 避孕ぶ通りへ出たとき、ガリオンはたずねた。
「望みどおりの値をつけさせたのさ」シルクはすまして答えた。
「でも、何も言わなかったじゃないか」
「われわれは長々と話しあった。見ていなかったのか?」
「ぼくが見たのは、二人が指をくねらせあっていたのだけだよ」
「それがわれわれの会話法なんだ」シルクは説明した。「あれはわたしの同国人が何千年も昔あみだしたひとつの独立した言語なんだ。謎言葉といって、口でしゃべるよりずっと早い。他人の前でも盗み聞きされずに話すことができる。名人なら、その気になれば天気の話をしながら商談をまとめることもできるんだ」
「ぼくにそれを教えてくれない?」ガリオンは夢中になってたずねた。
「おぼえるには長い時間がかかるぞ」
「ミュロスへの旅は長い時間がかかりそうなんでしょう?」
 シルクは肩をすくめた。「いいだろう。簡単じゃないが、暇つぶしになりそうだ」
「もう宿屋へ帰るの?」
「寄るところがある。ミュロスへはいる口実に積み荷がいるんだ」
「荷馬車をからっぽにして出発す避孕 藥 副作用るんだと思った」
「そうさ」
「でも今――」

「知りあいの商人に会うんだ」シルクは説明した。「そいつはセンダリア中の農作物を買って、アレンディアとトルネドラの市場がおあつら口服 避孕 藥え向きの状態になるまで商品を農場にとめている。それからそれをミュロスかカマールへ運ばせる手配をするんだ」
「ずいぶん入り組んでるみたいだね」ガリオンは疑わしげに言った。
「みかけだけさ」シルクはガリオンにうけあった。「おいで、見ていりゃわかる」
 その商人は流れるような青い長衣を着たトルネドラ人で、尊大な顔つきをしていた。シルクとガリオンが帳場に足をふみいれたとき、かれは陰気な顔のマーゴ人と話をしていた。ガリオンがこれまで見たマーゴ人がみなそうだったように、そのマーゴ人も顔に深い傷跡があり、貫抜くような黒い目をしていた。
 中へはいってマーゴ人を見たとき、シルクは気をつけろというようにガリオンの肩に手をのせ、前へ進みでた。「失礼いたします」かれはへつらうように言った。「ご来客中とは知らなかったもので。手がすくまでボーイと外で待たせてもらいますよ」
「ほとんど一日かかりそうなんだがね」トルネドラ人は言った。「重要な用件か?」
「積み荷がないかと思いましてね」シルクは答えた。
「ない」トルネドラ人はそっけなかった。「なにもない」マーゴ人のほうへ向き直ろうとして、かれは鋭くシルクを見た。「コトゥのアンバーじゃないか? 香辛料を扱っているんじゃなかったのか」
 ガリオンはシルクがその名を都の門番に告げたことを思いだした。小男がその名前を以前にも使っていたのは明らかだった。
「やれやれそれが」とシルクは溜息をついた。「投機をかけた最後の商品はアレンディアの岬沖の海底に沈んでしまっているんです――トル?ホネス行きの船二隻に満載した商品が。突然の嵐でわたしは文なしですよ」
「それはまた気の毒に、アンバー」トルネドラ人の大商人はどことなくとりすまして言った。
「しかたなく今は品物の運搬をやっているわけで」シルクはのっそりと言った。「おんぼろ荷馬車が三台、それがコトゥのアンバーが築いた帝国のなれの果てです」
「不運はだれにでもやってくるものさ」トルネドラ人は哲学的に言った。
「ではこの男がかの有名なコトゥのアンバーか」とマーゴ人が言った。耳ざわりなアクセントのある声はばかに柔らかだった。黒い全身を眺めまわした。「きょうここへきたのはついていた。あれだけ名高い人物に会えたのだからな」
 シルクは深々とお辞儀した。「めっそうもないことで」
「ラク?ゴスカのアシャラクだ」マーゴ人は自己紹介をして、トルネドラ人のほうを向いた。
「話し合いはしばし中断だ、ミンガン。偉大なる商人の損失の埋め合わせの役に立てば、大変な名誉というものだろう」
「なんともご親切に、アシャラクさん」シルクはまた頭をさげた。
 ガリオンの頭はありとあらゆるたぐいの警告を叫んでいたが、マーゴ人の鋭い目が気になってシルクにわずかな身ぶりひとつしてみせることができなかった。ガリオンはなにくわぬ顔でぼんやりした目つきをしながらも、めまぐるしく頭を働かせた。
 ミンガンが言った。「喜んで手伝うが、今のところダリネには積み荷がないんだよ」
「ダリネからメダリアへの荷物はもう委託されているんですよ」シルクはすばやく言った。
「荷馬車三台分のチェレクの鉄ですがね。ミュロスからカマールまで毛皮を運ぶ契約もあるんです。ただメダリアからミュロスまでは五十リーグありますからね、気になるのはそこなんで、からの荷馬車で旅してももうけにならないし」
「メダリアか」ミンガンは額にしわをよせた。「記録を調べてみよう。あそこには何か荷がありそうだ」彼は帳場を出ていった。
「あんたの偉業は東の王国じゃ伝説なんだ、アンバー」ラク?ゴスカのアシャラクは感嘆のおももちで言った。「おれがクトル?マーゴスを発ったときには、あんたの首にはまだ大変な賞金がかかっていたぜ」
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